トップページ > 自閉症の症状
自閉症の症状
自閉症の症状には、いろんなパターンがあると言われています。
軽い症状の場合、見た目には気づきにくいため、まわりの人には誤解されることもあります。
自閉症といっても、症状の現れ方は千差万別ですが、必ず根底には3つの能力障害があります。
これを「三つ組」の障害と言い、これがセットであったときに自閉症と診断するという医学的な取り決めになっているのです。「三つ組」の障害がセットである場合には、症状の現れ方が違っていても、子どもの伸ばし方の原則がとても共通します。
つまり、自閉症かどうかを判断するということは、いま何からどんな教え方をしたら伸びやすいかを調べる、ということなのです。
特によく見られる自閉症の症状を紹介していきましょう。
★対人関係がうまくいかない
自閉症の人の多くはまわりの人とかかわるのが苦手です。
このため、人を嫌って、自分の世界に入り込んでいるというイメージを持たれることも少なくありません。
赤ちゃんの時は知らない人にでも機嫌よく抱かれたり、お母さんへの後追いをしなかったりもします。
逆に人見知りや後追いが激しい子もいます。
子供にも大人にも共通して言えることは、人への関心が薄かったり、自分から一方的な行動をとってしまいます。
これは自閉症者本人が自分と相手とのがどんな関係なのかをちゃんと分かっていないことが原因と言えるでしょう。
★コミュニケーションがとれない
対人関係問題とつながってくる症状として「コミュニケーションがとれない」ことが挙げられます。
自閉症の子供には特徴として言葉の遅れが目立ちます。
たとえ、乳幼児期に言葉が出るようになっても「パパ」「ママ」などの日常生活に必要な言葉を覚えるとは限らないのです。頻繁に聞く言葉や自分が興味を持った言葉を繰り返し話す傾向があります。
したがって投げかけた質問とは無関係のことを答えたりします。
その後も言葉の数はなかなか増えずに、中には何も言葉が出なくなってしまうケースがあります。
さらに目線が合いにくい、呼びかけても振り向かないなどの問題も出てきます。
このようなことで会話が成り立たなくなってしまいます。
★行動や興味の範囲が限られる
よく見受けられる症状に「こだわり」というものがあります。
別な言い方をすればイマジネーションの問題とも言えるかもしれません。
自閉症の人たちはほとんど皆、物事に強いこだわりを持っています。
これは行動や興味の範囲が制限されることにつながります。
たとえば、どんなに早くても朝の決まった時間に必ず同じテレビ番組を見るとか、外から帰ったら必ず2回うがいをする、などです。
また、電車や様々なマーク・標識、文字、数字などに強烈な関心を抱くこともあります。
こういう偏った関心も大人になると特殊な才能として開花することも考えられます。
国旗を見ただけで世界中の国名を言い当てられたり、音楽などの分野で優れた才能を発揮する人もいます。
予想外の出来事が起こると適切な行動ができなくなってしまいます。
電車やマーク、文字、数字、特定のキャラクターなどに強い偏った関心を示すこともあります。こうした偏った強い興味は、少し大きくなると特殊な能力として発揮されることもあります。
音楽や絵画などに大変優れた能力を発揮する人もいます。
たとえば、山下清画伯は才能を開花させた自閉症であったと考えられています。
上記は「三つ組」の障害と言われ、自閉症の基本的な症状だと考えられています。
これ以外にも付随(ふずい)症状と呼ばれるものがあります。
必ず現れる症状ではありませんが、よく見られて、特徴的な症状をご紹介します。
・多動
手を放すとどこに行ってしまうかわからないといった落ち着きのなさは、自閉症でも多いものです。
落ち着きのなさばかり目立って、「三つ組」の障害に気づいてもらえず、自閉症なのに注意欠陥/多動性障害(AD/HD)と誤って診断されてしまうこともあるほどです。
・感覚異常
自閉症では、音や匂い、手触り、痛みなどの感覚を大脳で正しく情報処理できず、奇妙な反応を示すことが多くあります。
例えば、「耳ふさぎ」(音への過敏さ)などもその例です。
音は大脳皮質で情報処理されて、こんな音量・こんな音色とか、あのとき聞いた音とか、認識されるわけです。
自閉症では、この情報処理の過程に問題があって、日常のありふれた音を耐え難く認識してしまうことがあります。
その子には、ふつうの音がガラスを爪でこするようなイヤな音に聞こえるのかもしれません。
触覚の異常のために、木綿の下着を紙やすりのように痛いと感じる子や、痛みに対して極端に鈍感な子もいます。
自閉症で多い偏食も味覚や口の中の触覚が関係しているという意見もあります。
・睡眠異常
発達障害のある子は、睡眠のリズムの確立が遅れがちで、これもお母さんたちを困らせます。
3才になっても2時間おきに目を覚ますとか、睡眠時間が極端に少ないといったことです。
このように自閉症といっても症状の現れ方はいろいろです。
他人への適切な警戒心が育っていないという人づき合いの質的問題が、人を避ける形で現れることもあれば、見ず知らずの人へのなれなれしさで示されることもあります。
また同じ自閉症でも、他人に関心がなく言葉もないような症状の強い子から、ぺらぺらしゃベるけど一方的、自分の場違いさに気づけなくて、わがまま、しつけ不足、と誤解されてしまうような軽症の子まで、さまざまな段階が存在します。
しかし病状の現れ方や程度が違っていても、根っこに「三つ組」の障害があるなら、必要な援助は共通します。
そこで、英国の児童精神科医ローナ・ウイングは、ひとくくりにして自閉症スペクトラム(スペクトル)と呼ぼうと提案しました。
スペクトラムとは「連続体」という意味で、虹をイメージした言葉です。
彼女は、典型的な症状を示す子どもたちを「自閉症」と呼び、一見自閉症に見えない自閉症の子どもたちに「アスペルガー症候群」と名前をつけました。
★アスペルガー症候群について
アスペルガー症候群は自閉症の一つのタイプです。
アスペルガー症候群の子どもや大人は、
(1) 他の人との社会的関係をもつこと、
(2) コミュニケーションをすること、
(3) 想像力と創造性の
3分野に障害を持つことで診断されます。
典型的な自閉症も同じように3分野の障害(以下「三つ組」の障害」と呼びます)を持っています。
自閉症とアスペルガー症候群はひとつながりのものです。
子どもと書いてあってもほとんどの事項は思春期や成人のアスペルガー症候群の人にも当てはまります。
(1) の社会的関係をもつことというのは他の人と一緒にいるときに、どのように振る舞うべきかということです。
(2) のコミュニケーションとは自分の思っていることをどう相手に伝えるか、そして相手の言いたいことをどう理解するかということです。
最後の (3)想像力と創造性の問題とはふり遊びや、見立て遊び、こだわりと関係します。
★アスペルガー症候群の歴史
アスペルガー症候群はハンス・アスペルガーというオーストリアの小児科医の名前にちなんでつけられた診断名です。
ハンス・アスペルガー(以下アスペルガー)は1944年に「小児期の自閉的精神病質」というタイトルで4例の子どもについての論文を発表しました。
実はこの前年の1943年にレオ・カナーというアメリカの精神科医が早期乳幼児自閉症に関する論文を発表しています。
カナーの論文がその後、長く英語圏で影響を持つようになり、アスペルガーの論文は陰に隠れた存在でした。
日本はアスペルガーの論文は比較的早く紹介されたのですが、その後英米の影響が強まったこともあってあまり話題になることヘありませんでした。
英語圏で話題になるようになったのは1981年にイギリスのローナ・ウィングという児童精神科医がアスペルガーの業績を紹介し、再評価したことがきっかけです。
ウィングは多数例の研究から、自閉症とは診断されていないが、社会性、コミュニケーション、想像力の「三つ組」の障害をもつ子どもたちがいることに気づきました。
当時、自閉症という診断は、言語によるコミュニケーションが限定されており対人関心も非常に乏しい子どもにのみつけられていて、言葉によるコミュニケーションが可能であったり一方的でも対人関心がある場合は自閉症とは考えられていなかったのです。
ウィングはの「三つ組」の障害を持っていながら自閉症と診断されない子どもたちの一部はアスペルガーの報告したケースに似ていることからアスペルガー症候群という診断が適切であるとしました。
そうして自閉症と同じような援助・教育の対象にしようとウィングは考えたのです。
1981年以降、アスペルガー症候群はしだいに注目されるようになりました。
国際的な診断基準であるICD-10(国連の世界保健機関による分類)やアメリカ精神医学会の診断基準(DSM-IV)にもアスペルガー症候群の概念は採用され現在にいたっています。
アスペルガー症候群と類似あるいは同じ意味の障害 高機能自閉症、高機能広汎性発達障害などはアスペルガー症候群とほとんど同じ意味で使われることがあります。
高機能自閉症とは知的な発達が正常の自閉症のことです。
高機能自閉症とアスペルガー症候群が同じなのか異なるかについては研究者によって意見が異なります。
ウィングは、少なくとも臨床的には区別する必要はないとしています。
本書でもアスペルガー症候群と高機能自閉症を区別しないで使います。
本書でアスペルガー症候群について書かれていることのほとんどが高機能自閉症についても当てはまると思ってください。広汎性発達障害という呼び方はICD-10やDSM-IVの呼び方で、広義の自閉症と同じ意味です。
アスペルガー症候群も高機能自閉症も広汎性発達障害に含まれます。
なおDSM-IVの自閉性障害とICD-10の自閉症とはほとんど同じ意味で使われます。
他者への関心が極端に乏しく、こだわりが強い、いわゆる典型的な自閉症のことを指して「カナー型の自閉症」ということがあります。
「非定型自閉症」「特定不能の広汎性発達障害」といった場合は自閉症の症状が典型的には現れていませんかが、自閉症の症状のいくつかが明らかに存在する場合を指します。
「自閉症スペクトラム」はウィングが提唱している概念で、「三つ組」の障害が発達期に現れる子どもたちを総称しています。
広汎性発達障害とほぼ同じ意味ですが、より広い範囲の概念です。
★自閉症とアスペルガー症候群の違い
自閉症とアスペルガー症候群はひとつながりのもので、どこかで厳然と二つに分かれるものではありません。
幼児期には典型的な自閉症の特徴を持つ子どもが思春期になるとアスペルガー症候群の特徴が目立ってくる場合もあります。
強いて区別して言えばアスペルガー症候群の子どもや大人は一見して障害があるようには見えないことが多いのです。
話もできるし勉強なども人並み以上にできることがあります。
人前で独り言を言ったり常同運動をしたりすることは稀です。
一見自閉症にみえない自閉症といっても良いでしょう。
教育や援助の方法で大切なことは「三つ組」の障害をもっているかどうかです。
アスペルガー症候群と自閉症、そしてそのどちらの特徴も持っている場合も合わせて「三つ組」の障害があれば自閉症スペクトラムと総称することをウィングは提唱しています。
アスペルガー症候群でも自閉症でも「三つ組」の障害があれば、教育や援助の方法は共通しているのです。
アスペルガー症候群の子どもでは注意の集中や配分に問題があることがあります。
配分に問題があると、あることをしている時に声をかけても気がつかなかったりします。
ゲームに集中しているときに声をかけても振り向かないことは一般の子どもでもよくありますが、
アスペルガー症候群の子どもではそれが極端な形で色々な場で生じがちです。
私たちは、何かに集中している時でも非常ベルの音には気がつきます。
何かに集中していても、何%かの注意は他に向けられているわけで、そうでないと危なくて都会では生活できないでしょう。
アスペルガー症候群の子どもはそういった注意の配分が苦手で、あることに集中すると別のことには気がつかない傾向があります。
あることをしていて別のことに注意を移行することも苦手なことがあります。
前にやっていたことをいつまでも頭の中で考えていて新しいことがお留守になってしまうのです。
計画をたてること 自分で物事を計画して、複数のことがらを連続して実行していくことが苦手なことが多いのです。
ある程度周囲がプランを立ててあげないと、一人で複数のことを連続して実行していくことは難しいようです。
よく子どもの自主性を尊重する教育と言って、何もこちらで準備しなくて子どもの自由にさせるやり方が一部で推奨されていますが、このやり方はアスペルガー症候群の子どもには合いません。
★アスペルガー症候群の子どもとの接し方
援助の基本方針はまずアスペルガー症候群を理解するということです。
アスペルガー症候群の子どもは社会性、コミュニケーション、想像力の3領域に障害があります。
困った、不適切な行動、風変わりな行動をとったとしても、「わざとやっている」とか「ふざけている」とかとらないで下さい。
そのような行動の多くはアスペルガー症候群特有のハンディキャップのために生じているのです。
以下に述べるのはアスペルガー症候群の子どもとのつきあい方のいくつかのコツです。
1.予測しやすい環境
アスペルガー症候群の子どもは予測できないことや変化に対して苦痛を感じることが多いのです。
どこで何が予定されているかということをなるべく前もって伝えましょう。
言葉だけでなく文字(年少の場合は絵や写真)で伝えるのが効果的です。
つまりスケジュールを予告することが大切なのです。
現実の生活では予定どおりにいかないことも沢山あります。
予定外の出来事やスケジュールの変更も、できるだけ本人にわかるようにたとえ直前であっても明確に伝えることが大切です。
2.安全で穏やかな環境
アスペルガー症候群の子どもは騒々しい環境が苦手です。
余分な刺激の少ない静かな環境の方が本来の能力を発揮できます。
大声で叱ったりすることは逆効果です。
できるだけ穏やかに接するようにしましょう。
教師や親はできるだけ感情的にならず穏やかに冷静に話をする姿勢を持ちましょう。
大人が感情的になってしまうと、アスペルガー症候群の子どもは大人が言いたいことよりも感情的になったということのみに気持ちが向いてしまいがちです。
もちろん大人にも感情的になってしまう理由は十分あるのですが、子どもはその情況には無頓着で「怒られた」「拒否された」という気持ちのみが残ってしまうことが多いのです。
子どもの行動が変化するには長い時間が必要です。
困った行動は少しずつ、少しずつ改善していくのを目標にしましょう。
時には発達するのを待つという姿勢も大事です。
子どもにとって無理なことを強制するのはやめましょう。
一人で乗り越えさせようとすると多くの場合、自信をなくしてしまうか自分の興味のあることしかしなくなります。
アスペルガー症候群の子どもは非常にしばしばいじめの対象になります。
学校の休み時間、登下校時など大人の目の届かないところでいじめられていることが多いのです。
自分一人の力でいじめに立ち向かっていくことは不可能です。
またいじめられていることを教師や親に告げない、告げようとしない場合も多いのです。
できるだけ大人やしっかりした年長者の監督下におくことが必要です。
★アスペルガー症候群の原因
アスペルガー症候群の原因は親の育て方ではありません。
アスペルガー症候群の原因はまだ解明されたわけではありません。
しかし親の育て方、虐待、愛情不足などが原因ではありません。
アスペルガー症候群の子どもは幼児期から漢字を覚えていたり、計算が得意だったりするために、親が教育熱心すぎて愛情に欠けると周囲から思われていることがあります。
また正しく診断されていないことが多いために「わがままでしつけのなっていない子ども」とみられていることもあります。
アスペルガー症候群の行動特徴の多くは、認知発達の偏りで説明がつきます。
認知発達の偏りをもたらすのは何らかの脳機能の微妙な障害です。
アスペルガー症候群の原因はおそらく一つではないでしょう。
遺伝的要因や、妊娠中や出産時、出生後ごく早期の何らかの障害のために脳の特定の部分に障害が生じたのだろうと考えられています。
★診断をめぐる問題
アスペルガー症候群はいつも正しく診断されているわけではありません。
ひとつの理由は精神科医や小児科医、臨床心理学の専門家の間でもアスペルガー症候群の概念は、日本ではまだあまり浸透していないことがあります。
また日本の医療現場では健康保険制度上の問題もあって初診時の診察時間が短いことも一因です。
アスペルガー症候群の子どもは短時間の診察室での面接や診察では障害特性が明らかに現れないことが多いのです。
そのため「親の気にしすぎ」などとされ「正常」と診断されることもあります。
また学習上の問題や不注意や多動性などの方が微妙な社会性やコミュニケーションの問題などより目に付きやすいために「学習障害(LD)」や「注意欠陥/多動性障害(AD/HD)」などと診断されていることも少なくありません。
「こだわり」が目立つために強迫性障害として治療されていることもあります。
成人期になって初めて診断が下されることも少なくありません。
こういった人たちも、多くが専門医を受診しているのですが、「分裂型人格障害」、「単純型分裂病」、「ひきこもり」などの診断がつけられていることもあるようです。
青年期・成人期のアスペルガー症候群 これまでアスペルガー症候群の子どもについて述べてきましたが、その多くが成人のアスペルガー症候群の人にもあてはまります。
アスペルガー症候群は児童期に明らかになります。
その特性は年齢によって微妙に変化はしていきますが、本質的には成人期まで継続してみられます。
アスペルガー症候群の人が成人期になって初めて診断される場合も珍しくありません。
成人期の診断は診察時に「三つ組」の存在が認められ、かつ幼児期から「三つ組」の障害が明らかであったかどうかを確認することで診断がつきます。
したがって正確に診断するためには発達期のことを良く知っている家族の情報が必要になります。
軽い症状の場合、見た目には気づきにくいため、まわりの人には誤解されることもあります。
自閉症といっても、症状の現れ方は千差万別ですが、必ず根底には3つの能力障害があります。
これを「三つ組」の障害と言い、これがセットであったときに自閉症と診断するという医学的な取り決めになっているのです。「三つ組」の障害がセットである場合には、症状の現れ方が違っていても、子どもの伸ばし方の原則がとても共通します。
つまり、自閉症かどうかを判断するということは、いま何からどんな教え方をしたら伸びやすいかを調べる、ということなのです。
特によく見られる自閉症の症状を紹介していきましょう。
★対人関係がうまくいかない
自閉症の人の多くはまわりの人とかかわるのが苦手です。
このため、人を嫌って、自分の世界に入り込んでいるというイメージを持たれることも少なくありません。
赤ちゃんの時は知らない人にでも機嫌よく抱かれたり、お母さんへの後追いをしなかったりもします。
逆に人見知りや後追いが激しい子もいます。
子供にも大人にも共通して言えることは、人への関心が薄かったり、自分から一方的な行動をとってしまいます。
これは自閉症者本人が自分と相手とのがどんな関係なのかをちゃんと分かっていないことが原因と言えるでしょう。
★コミュニケーションがとれない
対人関係問題とつながってくる症状として「コミュニケーションがとれない」ことが挙げられます。
自閉症の子供には特徴として言葉の遅れが目立ちます。
たとえ、乳幼児期に言葉が出るようになっても「パパ」「ママ」などの日常生活に必要な言葉を覚えるとは限らないのです。頻繁に聞く言葉や自分が興味を持った言葉を繰り返し話す傾向があります。
したがって投げかけた質問とは無関係のことを答えたりします。
その後も言葉の数はなかなか増えずに、中には何も言葉が出なくなってしまうケースがあります。
さらに目線が合いにくい、呼びかけても振り向かないなどの問題も出てきます。
このようなことで会話が成り立たなくなってしまいます。
★行動や興味の範囲が限られる
よく見受けられる症状に「こだわり」というものがあります。
別な言い方をすればイマジネーションの問題とも言えるかもしれません。
自閉症の人たちはほとんど皆、物事に強いこだわりを持っています。
これは行動や興味の範囲が制限されることにつながります。
たとえば、どんなに早くても朝の決まった時間に必ず同じテレビ番組を見るとか、外から帰ったら必ず2回うがいをする、などです。
また、電車や様々なマーク・標識、文字、数字などに強烈な関心を抱くこともあります。
こういう偏った関心も大人になると特殊な才能として開花することも考えられます。
国旗を見ただけで世界中の国名を言い当てられたり、音楽などの分野で優れた才能を発揮する人もいます。
予想外の出来事が起こると適切な行動ができなくなってしまいます。
電車やマーク、文字、数字、特定のキャラクターなどに強い偏った関心を示すこともあります。こうした偏った強い興味は、少し大きくなると特殊な能力として発揮されることもあります。
音楽や絵画などに大変優れた能力を発揮する人もいます。
たとえば、山下清画伯は才能を開花させた自閉症であったと考えられています。
上記は「三つ組」の障害と言われ、自閉症の基本的な症状だと考えられています。
これ以外にも付随(ふずい)症状と呼ばれるものがあります。
必ず現れる症状ではありませんが、よく見られて、特徴的な症状をご紹介します。
・多動
手を放すとどこに行ってしまうかわからないといった落ち着きのなさは、自閉症でも多いものです。
落ち着きのなさばかり目立って、「三つ組」の障害に気づいてもらえず、自閉症なのに注意欠陥/多動性障害(AD/HD)と誤って診断されてしまうこともあるほどです。
・感覚異常
自閉症では、音や匂い、手触り、痛みなどの感覚を大脳で正しく情報処理できず、奇妙な反応を示すことが多くあります。
例えば、「耳ふさぎ」(音への過敏さ)などもその例です。
音は大脳皮質で情報処理されて、こんな音量・こんな音色とか、あのとき聞いた音とか、認識されるわけです。
自閉症では、この情報処理の過程に問題があって、日常のありふれた音を耐え難く認識してしまうことがあります。
その子には、ふつうの音がガラスを爪でこするようなイヤな音に聞こえるのかもしれません。
触覚の異常のために、木綿の下着を紙やすりのように痛いと感じる子や、痛みに対して極端に鈍感な子もいます。
自閉症で多い偏食も味覚や口の中の触覚が関係しているという意見もあります。
・睡眠異常
発達障害のある子は、睡眠のリズムの確立が遅れがちで、これもお母さんたちを困らせます。
3才になっても2時間おきに目を覚ますとか、睡眠時間が極端に少ないといったことです。
このように自閉症といっても症状の現れ方はいろいろです。
他人への適切な警戒心が育っていないという人づき合いの質的問題が、人を避ける形で現れることもあれば、見ず知らずの人へのなれなれしさで示されることもあります。
また同じ自閉症でも、他人に関心がなく言葉もないような症状の強い子から、ぺらぺらしゃベるけど一方的、自分の場違いさに気づけなくて、わがまま、しつけ不足、と誤解されてしまうような軽症の子まで、さまざまな段階が存在します。
しかし病状の現れ方や程度が違っていても、根っこに「三つ組」の障害があるなら、必要な援助は共通します。
そこで、英国の児童精神科医ローナ・ウイングは、ひとくくりにして自閉症スペクトラム(スペクトル)と呼ぼうと提案しました。
スペクトラムとは「連続体」という意味で、虹をイメージした言葉です。
彼女は、典型的な症状を示す子どもたちを「自閉症」と呼び、一見自閉症に見えない自閉症の子どもたちに「アスペルガー症候群」と名前をつけました。
★アスペルガー症候群について
アスペルガー症候群は自閉症の一つのタイプです。
アスペルガー症候群の子どもや大人は、
(1) 他の人との社会的関係をもつこと、
(2) コミュニケーションをすること、
(3) 想像力と創造性の
3分野に障害を持つことで診断されます。
典型的な自閉症も同じように3分野の障害(以下「三つ組」の障害」と呼びます)を持っています。
自閉症とアスペルガー症候群はひとつながりのものです。
子どもと書いてあってもほとんどの事項は思春期や成人のアスペルガー症候群の人にも当てはまります。
(1) の社会的関係をもつことというのは他の人と一緒にいるときに、どのように振る舞うべきかということです。
(2) のコミュニケーションとは自分の思っていることをどう相手に伝えるか、そして相手の言いたいことをどう理解するかということです。
最後の (3)想像力と創造性の問題とはふり遊びや、見立て遊び、こだわりと関係します。
★アスペルガー症候群の歴史
アスペルガー症候群はハンス・アスペルガーというオーストリアの小児科医の名前にちなんでつけられた診断名です。
ハンス・アスペルガー(以下アスペルガー)は1944年に「小児期の自閉的精神病質」というタイトルで4例の子どもについての論文を発表しました。
実はこの前年の1943年にレオ・カナーというアメリカの精神科医が早期乳幼児自閉症に関する論文を発表しています。
カナーの論文がその後、長く英語圏で影響を持つようになり、アスペルガーの論文は陰に隠れた存在でした。
日本はアスペルガーの論文は比較的早く紹介されたのですが、その後英米の影響が強まったこともあってあまり話題になることヘありませんでした。
英語圏で話題になるようになったのは1981年にイギリスのローナ・ウィングという児童精神科医がアスペルガーの業績を紹介し、再評価したことがきっかけです。
ウィングは多数例の研究から、自閉症とは診断されていないが、社会性、コミュニケーション、想像力の「三つ組」の障害をもつ子どもたちがいることに気づきました。
当時、自閉症という診断は、言語によるコミュニケーションが限定されており対人関心も非常に乏しい子どもにのみつけられていて、言葉によるコミュニケーションが可能であったり一方的でも対人関心がある場合は自閉症とは考えられていなかったのです。
ウィングはの「三つ組」の障害を持っていながら自閉症と診断されない子どもたちの一部はアスペルガーの報告したケースに似ていることからアスペルガー症候群という診断が適切であるとしました。
そうして自閉症と同じような援助・教育の対象にしようとウィングは考えたのです。
1981年以降、アスペルガー症候群はしだいに注目されるようになりました。
国際的な診断基準であるICD-10(国連の世界保健機関による分類)やアメリカ精神医学会の診断基準(DSM-IV)にもアスペルガー症候群の概念は採用され現在にいたっています。
アスペルガー症候群と類似あるいは同じ意味の障害 高機能自閉症、高機能広汎性発達障害などはアスペルガー症候群とほとんど同じ意味で使われることがあります。
高機能自閉症とは知的な発達が正常の自閉症のことです。
高機能自閉症とアスペルガー症候群が同じなのか異なるかについては研究者によって意見が異なります。
ウィングは、少なくとも臨床的には区別する必要はないとしています。
本書でもアスペルガー症候群と高機能自閉症を区別しないで使います。
本書でアスペルガー症候群について書かれていることのほとんどが高機能自閉症についても当てはまると思ってください。広汎性発達障害という呼び方はICD-10やDSM-IVの呼び方で、広義の自閉症と同じ意味です。
アスペルガー症候群も高機能自閉症も広汎性発達障害に含まれます。
なおDSM-IVの自閉性障害とICD-10の自閉症とはほとんど同じ意味で使われます。
他者への関心が極端に乏しく、こだわりが強い、いわゆる典型的な自閉症のことを指して「カナー型の自閉症」ということがあります。
「非定型自閉症」「特定不能の広汎性発達障害」といった場合は自閉症の症状が典型的には現れていませんかが、自閉症の症状のいくつかが明らかに存在する場合を指します。
「自閉症スペクトラム」はウィングが提唱している概念で、「三つ組」の障害が発達期に現れる子どもたちを総称しています。
広汎性発達障害とほぼ同じ意味ですが、より広い範囲の概念です。
★自閉症とアスペルガー症候群の違い
自閉症とアスペルガー症候群はひとつながりのもので、どこかで厳然と二つに分かれるものではありません。
幼児期には典型的な自閉症の特徴を持つ子どもが思春期になるとアスペルガー症候群の特徴が目立ってくる場合もあります。
強いて区別して言えばアスペルガー症候群の子どもや大人は一見して障害があるようには見えないことが多いのです。
話もできるし勉強なども人並み以上にできることがあります。
人前で独り言を言ったり常同運動をしたりすることは稀です。
一見自閉症にみえない自閉症といっても良いでしょう。
教育や援助の方法で大切なことは「三つ組」の障害をもっているかどうかです。
アスペルガー症候群と自閉症、そしてそのどちらの特徴も持っている場合も合わせて「三つ組」の障害があれば自閉症スペクトラムと総称することをウィングは提唱しています。
アスペルガー症候群でも自閉症でも「三つ組」の障害があれば、教育や援助の方法は共通しているのです。
アスペルガー症候群の子どもでは注意の集中や配分に問題があることがあります。
配分に問題があると、あることをしている時に声をかけても気がつかなかったりします。
ゲームに集中しているときに声をかけても振り向かないことは一般の子どもでもよくありますが、
アスペルガー症候群の子どもではそれが極端な形で色々な場で生じがちです。
私たちは、何かに集中している時でも非常ベルの音には気がつきます。
何かに集中していても、何%かの注意は他に向けられているわけで、そうでないと危なくて都会では生活できないでしょう。
アスペルガー症候群の子どもはそういった注意の配分が苦手で、あることに集中すると別のことには気がつかない傾向があります。
あることをしていて別のことに注意を移行することも苦手なことがあります。
前にやっていたことをいつまでも頭の中で考えていて新しいことがお留守になってしまうのです。
計画をたてること 自分で物事を計画して、複数のことがらを連続して実行していくことが苦手なことが多いのです。
ある程度周囲がプランを立ててあげないと、一人で複数のことを連続して実行していくことは難しいようです。
よく子どもの自主性を尊重する教育と言って、何もこちらで準備しなくて子どもの自由にさせるやり方が一部で推奨されていますが、このやり方はアスペルガー症候群の子どもには合いません。
★アスペルガー症候群の子どもとの接し方
援助の基本方針はまずアスペルガー症候群を理解するということです。
アスペルガー症候群の子どもは社会性、コミュニケーション、想像力の3領域に障害があります。
困った、不適切な行動、風変わりな行動をとったとしても、「わざとやっている」とか「ふざけている」とかとらないで下さい。
そのような行動の多くはアスペルガー症候群特有のハンディキャップのために生じているのです。
以下に述べるのはアスペルガー症候群の子どもとのつきあい方のいくつかのコツです。
1.予測しやすい環境
アスペルガー症候群の子どもは予測できないことや変化に対して苦痛を感じることが多いのです。
どこで何が予定されているかということをなるべく前もって伝えましょう。
言葉だけでなく文字(年少の場合は絵や写真)で伝えるのが効果的です。
つまりスケジュールを予告することが大切なのです。
現実の生活では予定どおりにいかないことも沢山あります。
予定外の出来事やスケジュールの変更も、できるだけ本人にわかるようにたとえ直前であっても明確に伝えることが大切です。
2.安全で穏やかな環境
アスペルガー症候群の子どもは騒々しい環境が苦手です。
余分な刺激の少ない静かな環境の方が本来の能力を発揮できます。
大声で叱ったりすることは逆効果です。
できるだけ穏やかに接するようにしましょう。
教師や親はできるだけ感情的にならず穏やかに冷静に話をする姿勢を持ちましょう。
大人が感情的になってしまうと、アスペルガー症候群の子どもは大人が言いたいことよりも感情的になったということのみに気持ちが向いてしまいがちです。
もちろん大人にも感情的になってしまう理由は十分あるのですが、子どもはその情況には無頓着で「怒られた」「拒否された」という気持ちのみが残ってしまうことが多いのです。
子どもの行動が変化するには長い時間が必要です。
困った行動は少しずつ、少しずつ改善していくのを目標にしましょう。
時には発達するのを待つという姿勢も大事です。
子どもにとって無理なことを強制するのはやめましょう。
一人で乗り越えさせようとすると多くの場合、自信をなくしてしまうか自分の興味のあることしかしなくなります。
アスペルガー症候群の子どもは非常にしばしばいじめの対象になります。
学校の休み時間、登下校時など大人の目の届かないところでいじめられていることが多いのです。
自分一人の力でいじめに立ち向かっていくことは不可能です。
またいじめられていることを教師や親に告げない、告げようとしない場合も多いのです。
できるだけ大人やしっかりした年長者の監督下におくことが必要です。
★アスペルガー症候群の原因
アスペルガー症候群の原因は親の育て方ではありません。
アスペルガー症候群の原因はまだ解明されたわけではありません。
しかし親の育て方、虐待、愛情不足などが原因ではありません。
アスペルガー症候群の子どもは幼児期から漢字を覚えていたり、計算が得意だったりするために、親が教育熱心すぎて愛情に欠けると周囲から思われていることがあります。
また正しく診断されていないことが多いために「わがままでしつけのなっていない子ども」とみられていることもあります。
アスペルガー症候群の行動特徴の多くは、認知発達の偏りで説明がつきます。
認知発達の偏りをもたらすのは何らかの脳機能の微妙な障害です。
アスペルガー症候群の原因はおそらく一つではないでしょう。
遺伝的要因や、妊娠中や出産時、出生後ごく早期の何らかの障害のために脳の特定の部分に障害が生じたのだろうと考えられています。
★診断をめぐる問題
アスペルガー症候群はいつも正しく診断されているわけではありません。
ひとつの理由は精神科医や小児科医、臨床心理学の専門家の間でもアスペルガー症候群の概念は、日本ではまだあまり浸透していないことがあります。
また日本の医療現場では健康保険制度上の問題もあって初診時の診察時間が短いことも一因です。
アスペルガー症候群の子どもは短時間の診察室での面接や診察では障害特性が明らかに現れないことが多いのです。
そのため「親の気にしすぎ」などとされ「正常」と診断されることもあります。
また学習上の問題や不注意や多動性などの方が微妙な社会性やコミュニケーションの問題などより目に付きやすいために「学習障害(LD)」や「注意欠陥/多動性障害(AD/HD)」などと診断されていることも少なくありません。
「こだわり」が目立つために強迫性障害として治療されていることもあります。
成人期になって初めて診断が下されることも少なくありません。
こういった人たちも、多くが専門医を受診しているのですが、「分裂型人格障害」、「単純型分裂病」、「ひきこもり」などの診断がつけられていることもあるようです。
青年期・成人期のアスペルガー症候群 これまでアスペルガー症候群の子どもについて述べてきましたが、その多くが成人のアスペルガー症候群の人にもあてはまります。
アスペルガー症候群は児童期に明らかになります。
その特性は年齢によって微妙に変化はしていきますが、本質的には成人期まで継続してみられます。
アスペルガー症候群の人が成人期になって初めて診断される場合も珍しくありません。
成人期の診断は診察時に「三つ組」の存在が認められ、かつ幼児期から「三つ組」の障害が明らかであったかどうかを確認することで診断がつきます。
したがって正確に診断するためには発達期のことを良く知っている家族の情報が必要になります。